移動スーパーの感動の物語!『うちの父が運転をやめません』(垣谷美雨著)

拝啓 垣谷美雨先生

突然のお手紙、失礼いたします。
垣谷先生の新刊「うちの父が運転をやめません」を読ませていただきました。
拙著「買い物難民を救え!移動スーパーの挑戦」を参考にしていただいたということで、各所に思い当たるシーンが散見され、本当にうれしく、楽しく読ませていただきました。

先生の本の中でまず印象に残ったのは、田舎の食の豊かさです。
P 141にあるような、風景と食が密接につながっているのが田舎の豊かさなんですよね。そして風景と暮らし。満天の星や冷たい水道、ゆっくりできる縁側のある畳の部屋なんか、都会のストレスがスーッと抜けていく気がします。

それから、移動スーパーを頼む人の心境、リアルに再現していただきました。
P 151「買い物難民を見捨てる気ですか」の言葉ですが、実際にお断りする時には、それに近いものを聞くことがあります。頼む方の状況は、ほんと切実なんですよね。
それと移動スーパーが巻き起こす旋風。それまで死んだような凪の状態の田舎が、移動スーパーが回り始めることによって、なんか活性化してお年寄りたちがイキイキしはじめるんですよね。

移動スーパーの良いところと大変なところ、ほんとうまくストーリーにのせていただいて、大きな感謝を感じています。

この本のもう一つのテーマは、転職する人の不安や、家族関係の葛藤ですね。
私も今、54歳で雅志と同世代なので、我が事のように身に染みました。P 287のような、会社を思い返す雅志の心境にほとんどの人が共感を覚えるのではないでしょうか。そして地味に私が納得したのは「あの頃の大人は、誰一人として人生を楽しむことを教えてくれなかった」という言葉です。
私はもうこのセリフを広く世に出してほしいがために、この御本を映画化・ドラマ化してほしいぐらいですw
ほんともう「いい大学へ、いい会社へ、会社が嫌なら公務員へ」と、これだけの画一的な価値観一色でしたね。そしてそれがなんと驚くべきことに、今も全く変わっていない。
2〜3年で、技術も価値もシステムも激流のように変化する社会の中で、その凝り固まった価値観だけは全く変えないままなのですから、親も子も、まったくたまったものではありませんよね。
最近、引きこもりのことをよくN H Kなどで取り上げていますが、私は、いつも「親もかわいそうだな」と思ってしまいます。「働かざる者、食うべからず」とか、「もっと勉強していい大学へ行け」とか、私たちがシャワーのように浴びてきた価値観を子どもに押し付けたら、このタフな生産性砂漠のような社会の中で、引きこもるのも当たり前ですよね。だけどじゃあ親はどうしたらいいというのか。
その辺の葛藤が先生の御本の中にリアルに描かれていると感じました。

最後に、鶴子さんのエピソードには泣きました。
恥ずかしながら、私も鶴子さんと同じような事情にありますので。
参考文献に無いはずwの助手席予約って、何を言い出すのかと思ったら・・・
「明日の予約は、鶴子さんだ」
・・・やられました(泣)。

長文失礼いたしました。
先生におかれましては末長くお元気で、益々のご活躍を祈念しています。

敬具

村上稔

『うちの父が運転をやめません』垣谷美雨 著 角川書店https://www.kadokawa.co.jp/product/321811000204

                                                          

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です